橋/岡部淳太郎
 
あるいは晩夏の目醒め


夢は終った。その疲労を脚韻ににじませて、僕は森の中を歩いている。森は僕の森。基本的な掟に支配された原始の森。森の秩序のすべてをとりしきる僕のため、鳥たちは譜面通りに歌い、樹々は指定された地表から等間隔で伸びている。僕はこの森の王。疲れた時はいつも、森は僕を優しく包んでくれる。柔らかな木漏れ日。夏の終りに残る暑さを柔らげる涼しい影。優しく僕のために存在する森。今日も僕は疲労を足どりに表して、森の中に逃げ帰って来た。木の切り株に腰をおろして休んでいると、すぐそばの木の幹で蝉が鳴き始めた。予定調和のコーラス。心地良い、眠りの中
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   グループ"散文詩"
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