読むことのスリル──ひだかたけし小論(6)/朧月夜
 
死によって詩を書き始めたということを、どこかに書いていたように思います。亜郎が死んだのは、中也が八歳のとき。早すぎる「詩人の誕生」です。以来、本人の言によれば、二十三年にわたって詩人は詩を書き続けるのですが、詩を書くこと以外に人生を顧みなかったという点において、中原中也はやはり「生まれながらの詩人」なのです。
 ですが、ここに現代詩の問題があります。「詩は売れない」ということは何も現代に限った問題ではないと思うのですが、戦後詩の詩人たちは、例えば谷川俊太郎が翻訳や興行にその活路を求めたように、「詩は売れない」というのは現代における既定路線です。では、何を求めて人は詩を書くのか? 他人の評価でしょ
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