読むことのスリル──ひだかたけし小論(6)/朧月夜
けが人の行ひを罪としない。
これは「人生論」ですが、中原中也という詩人の生涯を見るとき、これは「詩論」であると結語しても良いような表現でしょう。彼は、「在りし日の歌」という詩集の後記に、次のようなことを書いています。
詩を作りさへすればそれで詩生活といふことが出来れば、私の詩生活も既(すで)に二十三年を経た。もし詩を以て本職とする覚悟をした日からを詩生活と称すべきなら、十五年間の詩生活である。
「詩を書くこと」すなわち「詩人の誕生」でしょうか? そのことについて、わたしは疑問に思っています。「生まれながらの詩人はいるのか?」という問いの再出です。中原中也は、弟亜郎の死に
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