読むことのスリル──ひだかたけし小論(6)/朧月夜
 
れは、書こうとして書き忘れていたことですが、ひだかたけし氏の詩において、「詩」という言葉が出てくる詩編は三十数篇を数えます。これは、膨大な作者の詩作品において、多いと言える数でしょうか。あるいは、存外少ないものでしょうか。詩人が詩人たるためには、中原中也が言ったように「自恃」を必要とします。わたしたちが「生きるために生きる」という姿勢を貫かなければいけないように、詩人とは「詩を書くために詩を書く」という姿勢を貫かなければいけないのです。わたし自身は、詩のなかに「詩」という言葉が現れてくることをあまり好いてはいないのですが、詩人がその秘密の一端を明らかにする、読者を惹きつける、という点においては、詩
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