読むことのスリル──ひだかたけし小論(6)/朧月夜
直面させられているのです。いつか、この「ひだかたけし」という詩人の全集が出たとき、初めて読者はこの詩人の全貌について知ることでしょう。それまでは、作者がわたしたち読者を見放していない、という温情にすがるべきなのです。上に引用したように、この作者の詩は自己満足でも自己完結でもなく、読者に対しての扉が開かれているからです。
この章の最後に、「垂直ノイズ」(*4)という詩からの一節を引用しましょう。
青、熱、青、熱
垂直に立つ
二足歩行のノイズ を
次から次に襲う高波
垂直に立つが故に
天を仰ぐが故に
悪に魅せられるが故に
わたしがこの詩
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