読むことのスリル──ひだかたけし小論(6)/朧月夜
 
うにも思われます。氏は「僕はあまり過去作、振り返らない」と言明しているのですが(これは、氏とのメールのやり取りで聞いた言葉です)、その詩歴が一貫したポエジー(俗な言葉ですが)を持っているとき、その作品は「時間」というものを排して、「過去」と「未来」とがつながります。そこに現れてくるのは、一人の詩人の人間像です。
 ここで、新たな問いが生じます。すなわち、人はその詩人の作品に惹かれるのでしょうか。あるいは、その詩人その人に惹かれるのでしょうか。この問いは易しくも深い問いです。「好悪によって詩を読めば良い。好きな詩を書く詩人は良い詩人」という答えに、人は容易に到達するためです。このことを、わたしは否
[次のページ]
   グループ"読むことのスリル──ひだかたけし小論"
   Point(2)