読むことのスリル──ひだかたけし小論(6)/朧月夜
からく人生の対極として死の表現を試みようとするものですが、氏の詩における「死」とは、それとは違ったものであるように思えます。「私欲思考ヲ停止シ/死に思に詩の言葉の飛躍に!」という表現からは、氏の生活において「時間」というものが止まっていることをも、想像させます。ここで、「死」とは文学的な意味での「死」であり、思考を進めれば哲学的な意味での「死」でもあります。氏の詩群において、「死」は「現世」に対する「非現世」としての意味を出ないのです。すなわち、詩人は「死を受容してはいない」。
少し長くなりますが、再び氏の詩から引用します。「思考」(*3)という詩の一節です。
死んだらどうなるのだ
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