世界の真実(十)/朧月夜
「単純な話だ。生きとし生ける者には、霊魂が存在する。
そして、世界は一つの心を持っている……。
わたしは、このことを数十年の年月の末に確かめたのだ。
わたしを導いたのは、魔術という一種の道楽だ」
「そうおっしゃいますが、今魔術というのは、世界を統べる術であります。
魔術がなければ、人々はその生活もままなりません」
「買い被りすぎだな。魔術がなくても、人は生きてゆける。
むしろ、魔術があるこの世界は、幸福に過ぎるとも言えるのだ」
「いいえ、魔術があるせいで、この世界には正しさと誤りとが、
共存しております。そのゆえにこそ、争いが生じもするのです。
魔術がない世界……そんなものがあり得るのでしょうか?」ヨランが、その道化者の仮面を脱いだ瞬間だった。
「魔術がない世界か。世界は後戻りは出来ぬ。それは科学の時代に証された。
我らはただ、時の流れにしたがって生きていくしかないのだ。……ヨラン、と言ったか?
お前は何を求めて、ここへ来た。今一度、それを我に申してみよ」
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