世界の真実(九)/朧月夜
「そんなものが、この地に満ちているのですか?」ヨランが愕然とした。
目に見えぬ生命があるなどと、ヨランは理解できなかった。
しかし、科学が崩壊する以前の文明であれば、それは当然の話だった。
「この世には目に見えぬものがある」──科学は魔術をも超えるのである。
「で、では? わたしたちが生きているこの世界とは?」
「科学が行きついた、その先にある。生命たるものの、究極の世界だ」
「おい、ヨラン! 何を言っている! 科学とは何だ?
お前は何を言っている! この女を、我らは倒せば良いのではないのか?」
「この方を、倒してはなりません」と、ヨランはアイソニアの騎士に向かって言った。
「それでは、きっと世界を崩壊させてしまうことでしょう」
「よく察したな、盗賊。今の我は、『世界』だ。いや、その歯車を握っている」
「その歯車とは、……このハーレスケイド?」ヨランは、ずしりとした重みに圧されて言う。
「そうだ。ハーレスケイド。古代語では『神殺しの世界』、と言う」
「か、神殺しの世界……。では、では……」ヨランはたった一言を口にするのも苦労するのを感じた。
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