もみじ/板谷みきょう
 
屏風山のずっと奥深い所に純白の峰があった。
その「せせらぎの峰」の頂上に立てば、この世の果てまで眺められ、全てを知ることができると云う、言い伝えまでがある。
しかし、頂上はいつも、雲に隠れていて、獣たちの誰も、見たことが無かった。屏風山に住む長老のみみずくは、一度だけ見たことがあるそうだけれど、獣たちの誰も、その本当を聞いたことが無かった。

クヌギやコナラなどの雑木林に流れる「ぬらくら川」のほとりに、一本の紅葉の木があった。獣たちが、いつもの様に、紅葉の木の根元に集まっていた秋の日に、にわかに雲が、すっかりと消え去り、見渡す限りに清しく、晴れ渡る青空の向こうに、忽然と姿を現した。
集ま
[次のページ]
   グループ"童話モドキ"
   Point(1)