無人駅 〜ジョバンニ発、カンパネルラ行〜/ハァモニィベル
 
哀しみは、この駅の1番線に到着し、9番線から出るという。無人駅は、待つ人は疎らで、降りる人ばかりがやたらに多い。1番線にやって来る列車は日に何本もあるが、9番線からは滅多に出て行くことがない。俺はそんな無人駅で、一人きみを待っている。

君がいま、小さな切符を手にしているのは、大きな決断をしたからに違いない。きみを乗せた列車は、今どの辺りを走っているのだろう。いつだったか、君が、「駅のベンチって、公園のベンチより冷たく感じるけど何故(どうして)?」と訊いたのを、俺は今、思い出している。

切符を買った瞬間から、ひとは、駅と駅の間をただ移動するだけのモノになる。ただそれだけのモノが座るイスは
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   グループ"プチ企画作品または制作時工夫のある作品"
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