『年中行事』  卵から始まるはな詩?/ただのみきや
 

心臓が締め付けられるようだ
脇の下を冷たい汗がつたう
駄目だ
絶対に駄目だ
寂しい思いはさせられない
そんなことは許されない

顔色が悪いがどうしたのかと
白髪の男が声をかけてきた
わたしは卵が買えずに困っていることと
息子の誕生日にオムライスを作ることを伝えると
男は 深く何度も頷き
それから優しそうに微笑んで
まるで良くあることだと言いたげに

「大丈夫 なにも心配はいりません」

そして男は 自分は家で沢山の鶏を飼っている
これから一緒に家へ行かないかとわたしを誘った
わたしは一も二も無く従った

男と一緒にバスに乗って揺られていると
うとうと眠
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