雪が降る、一月に言葉は/石瀬琳々
きみは、ぼくの、愛の痛み
そして誰も知らない言葉だった
忘れたことのない言葉だった でももう遠い
舌の上に転がしても 口にすることさえ遙かで
雪が降る、雪が降る、ぼくのさびしい昼に
一月の太陽は輝き こうしてあたらしい夢に
熱情はまだ続いている 雪が降る、まるで
炎に似たセツナサデ 静かにそっと燃えている
振り返ってもいい 誰もいない冷たい道に
陶器の手触りだけが指先に残っている
触れたこともないのに この指に残るあざやかな
あれは、痛みだったろうか
ふいに割ったら指に突き刺さり 血が音もなくしたたるだけの
雪は降る、雪は降る、それとも忘れるというやさしさで
ぼくの、愛の痛み、きみは
言葉はもう思い出してはいけない 残された傷のまま
きみのなまえを ずっと願っていたかった
こぼれるのはただ雪、雪が降る、声もなくして
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