Miz 8/深水遊脚
夜に喫茶店に誘われるというのも珍しいし、この時間に開いている喫茶店も珍しい。ここに誘った男が力説するこの店のよさについての話に、大袈裟な相槌で新鮮な驚きを演じながら聞き入る振りをする私を、さっきからマスターが笑いを堪えながら見ている。 マスターが笑いたいのも無理のないところ。できれば私も外野になって笑いたい。ここは私の行きつけの喫茶店。私のコーヒーチケットも壁に貼ってあり、珈琲豆は必ずこのお店で買う。 私の好みを見抜いたセンスは認めるし、認めてもらいたい気持ちは一目で分かるけれど、好みの店を私が愛用している可能性を考え、実際に気付くことはそう難しいことではなかったと思う。私から伝えてもよかったけ
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