金魚(散文詩)/そらの珊瑚
 
が多い。ぼやけた色あいの服に、薄くなった頭頂部を隠す、これまた似たような、くたびれた古帽子。老眼鏡。いずれも見たような顔ばかりだ。私も新聞はとうの昔からとっておらず、ここで読むのを日課としている。年金のみの暮らしをどうにか立ちゆかせるための、ささやかなやり繰りとでもいおうか。そうして、ゆうに二時間はかけて五社のそれを読むのである。それだけで、たいくつな一日が残り二十二時間になるのだから、悪くない時間の使い方であるだろう。
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 そろそろ腹が減ったので、本を二冊(今夜の友に一冊。もう一冊は先の一冊が面白くなかった時の保険。つまらない本に時間を費やすことほど、つまらんことはない)借りて帰
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  グループ"散文詩"
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