【批評祭参加作品】わかンない!/藪木二郎
しているのだ。引用され、織り込まれているさまざまな固有名──「Simone Weil」、「Issac Newton」、「William Blake」、「エミリー」、「大野一雄」……──もまた、したがってここでは、その「固有」性の指示機能を解体されて、単独者として呼び集められ、互いに結び合わされている。そこでは「記号に対する物質的痕跡の優位」(アルチュセール)が、静かに、しかし決定的に宣言されているのである──(同、三九‐四〇頁)
だが、すでに見たところから明らかなように、この「わたくしたち」という独自の音域で鳴り響いている人称が指し示しているのもまた、単なる一人称複数の一般性ではないし、あ
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