【批評祭参加作品】わかンない!/藪木二郎
 
よって指し示されるだけなのである。「The Other Voice」の吉増剛造が「無言の口の瞳に倣」うことで行おうとしているのは、まさしく、このような意味における一般性を欠いた個物=単独性をそれとして指し示すことであるだろう。詩句の一つひとつに複層的なルビを振り、傍点を打ちつけ、さまざまな括弧や符号を刻みつけ纏わせることによって、詩人はみずからの言葉の持つ一般性──それは言葉が言葉として機能するかぎり不可避的なことである──を、かすかにではあれ決定的に綻ばせ、みずからの作品をして個物=単独性たちがそれ自体として互いを伝達し合うことのできる場、すなわち世界の偶然的実在が肯定される場たらしめようとして
[次のページ]
   グループ"第5回批評祭参加作品"
   Point(1)