ぐい呑み/……とある蛙
目の前にある一杯のぐい呑みに溢れた
桜政宗の燗酒をぐいと飲み干す
その傍らには酒の肴の赤身のマグロと
今日一日の痼(しこ)り
プルンと小鉢に鎮座して、
それを箸先で舐め
全てを忘れる切っ掛けにしようと
酒と一緒に胃袋に放り込む。
こんな事で一日の全ての痼(しこ)りが
忘れられるのなら
俺は握りしめた全ての有り金を
ポケットにある全ての有り金を
テーブルに放り出し呑むだろう。
呑んで酔った振りをしてみても
隣の親父と違う痼(しこ)りなので
話は噛み合わずに宙を舞う。
話は自分と無関係に
親父と無関係に宙を舞う。
それでも一日の痼(しこ)りが
忘れ
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