過去のこと/はるな
べてではないけれど。易しいのと、難しいのとあるけれど。そうおもう。
シャンパンのこまかい泡。糊のききすぎたシーツ。いくつもの間接照明、ずっしりしたペン立て、刻印されたホテルの名前、新宿御苑は窓のそとに暗く沈んで。雨がまた降りだしていて、よく見えなかった。暗くて、だから逆に部屋のなかのものものがくっきり映し出されて。それでいて、自分の表情はぼんやりとしかうつらなくて。
いちばんすきなひとと、誕生日を迎えられたら、よかったのに。そうしたら、シャンパンも、夜景も、高層ビルも、豪華な食事も、贈り物も、花束も、なんにもいらなかったのに。 たぶん。
雨が降ればいいとおもったのだ。季節を変えるよう
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