眼科のこと/はるな
さくらも雪柳もなんだってああもこぼれるように咲くんだろう。
かたわらでぼとぼと落ちている椿の鮮やかに腐れるさま。
きょうも海が見えている。花曇り、ぼうやりとした稜線。
手を閉じたり開いたりしているだけで月が行ってしまう気持ち、海にわかってもらえるだろうか。
いつもの眼科はいつものように混雑していた。ここの眼科にはべらぼうに早口の医師がいる。さくさくとビスケットを割るように検診してゆくのが面白い。わたしの眼球は気球のような絵を見させられ、しゅっと風をふきつけられ、不格好なかたちの検査用の眼鏡(レンズをかちゃかちゃと入れ替えられるやつ)を通してすこし向こうの記号を判別させられる。
問
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