【批評祭参加作品】近代詩と現代詩の受容の違いについて/岡部淳太郎
抒情を届けてくれる。そのためには、詩は若年者が書くものであり、浮世離れしていて女々しくて、なよなよしているものでなければならなかったのだ。ここにはおそらく、人々が無意識のうちにも詩に対して抱いていた欲望が介在している。それは先述した現実からひと時逃れるための装置としての役割、そのために抒情を表出して受け手を気持ちよくさせてくれるものとしての詩の姿であり、こと現実生活というものへの融通が利かない勤勉な日本人であるからこそ、逆にそのような便利な機能を詩に求めたのだとも言いうるかもしれない。さらにつけ加えるならば、昭和二十年の敗戦によってそれまで拠りどころにしていたものがことごとく覆され路頭に迷わざるを
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