【批評祭参加作品】失われた「鈴子」を求めて/香瀬
あたしの彼は子供たちに延々と肩を叩かれ、あたしの恋人をリストラされてしまった。そうなってはじめてあたしたちはきっと二人が恋人同士であったことに気付くのだと思うけど、だいたい気付くときには気付いたものはどうでもよくなってるよね。
彼のあだ名が「チャンス」だった頃、彼の固有名詞は完全に剥奪されていた。男子からも女子からも校長先生を含む学校中のすべての先生から「チャンス」と呼ばれることで彼の固有名詞は回復の機会=チャンスを奪われ、それゆえ「チャンス」というあだ名は蔑称として機能していた。
「ぺちゃんこのカバン」ってのはだいたいちょっと不良っぽい子が持っていて、いわゆる改造カバンってやつで
[次のページ]
前 次 グループ"第4回批評祭参加作品"
編 削 Point(15)