【批評祭参加作品】失われた「鈴子」を求めて/香瀬
から、カラフルってよりセピア色だろうと思う。
どんどんお月様は南の空へ、だんだん夜が不思議に明るくなって、星とか犬とか鈴虫とか落ちてくるんじゃないかな。あたしはたぶんもう「ジョン」って言われても反応しないと思うけど、固有名詞をなくしたような気分で階段を上り続けていると、山林からは鈴虫の音が聞こえて、それは上れば上るほど大きくなってくるようだった。
あたしは自分の名前がわかんないけど、忘れているから覚えなきゃいけないのかな。「わたし」は「もう覚えることをしたく」ないらしいんだけど、それってなんでだろう。「うしろからいつも逃げたくなる人」って順番に並んだ列の最後尾から逃げたくなる人のこ
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