【批評祭参加作品】失われた「鈴子」を求めて/香瀬
しかありません
だからといって
一度入ってしまうと
出ることは簡単じゃないんです
それを知っているから
みんな知っているから
そんなことさえ忘れていると思うんです
町子さん、ねえ、町子さんってば、聞こえていますか?
東京のはずれで
わたし、あなたがしあわせに
今日も明日も生きていることを知っているんだよ
(巴里子「町子さん」全文)
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もうずいぶん階段を上った。いつの間にか鈴子はあたしのはるか前を歩いているし、いつのまにかyumicaはあたしのはるか後ろで腐ってる。しかたがないので上り続けるけど、どこまで上ったら鈴虫寺につくのか
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