【批評祭参加作品】失われた「鈴子」を求めて/香瀬
 
しいとの噂が聞こえた。

 ほんとうに?ほんとうに中身はないの?激昂した女の子は彼の服を次々と脱がし始め全裸にしてしまうとあたしの服も脱がし始めた。あたしたち二人は誘拐されたので人質は人質らしく無抵抗にされるがままにしていた。ほら、中身はあるじゃない!と鈴の音と共に叫ぶと女の子はあたしたちの服をすべてもって家を出てしまった。きっと砂場の近くの砂漠に穴を掘って埋めてくるのだろう。

 あたしたちは囚われているのに二人きりになったことで子供たちから解放されたように感じたけれど、翌朝には二人でワンと吼えた。あたしたちは犯人役と犬役を交互に演じて、この家の中にある身代金を探した。いつしかあたしたち
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   グループ"第4回批評祭参加作品"
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