【批評祭参加作品】失われた「鈴子」を求めて/香瀬
たちはお互いのことを「ジョン」と呼び合い「john」でないことに気付いた。固有名詞は「0」じゃなかったかしら、とあたしが言うと、ほら、中身はあるじゃない!と彼が叫んだ。鈴の音はしなかった。
「ジョン」には墓場があったしだからこそ荒らされもした。あたしたちの埋められた服もどこにあるのかおおよその見当は付いているけれど、埋められてからどのくらいの時日か経過したのか知らない。でも「john」の墓はどこにあるのだろう。名付けるということは、名前とその名で呼ばれる対象を引き裂くようで、そんな裂けるチーズみたいに「ジョン」と犬役のあたしたちはこの家に裸で存在していた。じゃあ、裂けたチーズの境目には「j
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