【批評祭参加作品】失われた「鈴子」を求めて/香瀬
 
とても静かで、どんぱちはいつのまにか野球になっていて、攻勢の男子と女子も守勢の男子も女子もみんなそろって空を見上げていた。打ち上げられた白球が落ちて来るのを静かに待っていた。黙祷のようだった。

 リンリン、リンリン、リンリリン、

 その様子を見ていた知らない女の子は退屈そうな顔で滑り台の上に突っ立って公園を一回り見渡すと、バカみたいと言って教会とは反対の方角へ歩き出した。あたしも彼も見上げる子供たちも見上げられてる子供たちも誰一人「ホーキンスさん」の具体的な財産に興味はなかったのだが、誰一人そのことに気付かなかった。

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読み進めるたびに脈絡
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   グループ"第4回批評祭参加作品"
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