【批評祭参加作品】失われた「鈴子」を求めて/香瀬
 
じゃないかしら、とは彼女の言葉だった。あたしもいつかあたしの役柄を誰かに返さなくちゃいけないのかもね、あたしはまだ返す宛てを見つけてないや、と彼女が続けると、あたしもよ、と知らない女の子が僕たちの後ろで呟いた。

リンリン、リンリン、リンリリン、

 鈴の音のように知らない女の子は言う。冷蔵庫の中に瓶がたくさん入っている様を想像してほしい。どの瓶の中にも一欠けらのピクルスも入っていないのだとしたら、冷蔵庫の中は空っぽでいっぱいってことじゃないのかな。

 充填された空洞を子供たちが体現している。子供たちを充填された空洞が体現している。男子も女子も色とりどりのパンツだったが、どいつもこい
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   グループ"第4回批評祭参加作品"
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