批評祭参加作品■回り道、つぶやく。 ??五十嵐倫子『空に咲く』について/岡部淳太郎
「しっぽの先まであんが入っているんです」
差し出すと 男は少し微笑んだ
知り合うなんて そんなものだ
(「たいやき 友だち」部分)
先に引用した「家に帰ってからチンして食べることにして」という計画は、男の登場によってあっけなく軌道修正される。「1つだけは気が引けるから 2つ買」ったことが功を奏したような形だが、別にここからロマンスのようなものが始まるわけではない。結局この男とはただ一緒にたいやきを食べ、「しばらくのあいだ/夕日がビルの谷間に沈んでゆくのを眺め」るだけで終ってしまう。物語は発展せず、ひたすら語り手の心の動きだけがつづられていく。何気ない
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