批評祭参加作品■〈日常〉へたどりつくための彷徨 ??坂井信夫『〈日常〉へ』について/岡部淳太郎
〉から果てしなく離れた異世界からの帰還。だが、それは華々しく祝福されるわけではない。〈日常〉にあふれる様々な事物はどこかよそよそしく他人のような顔をしている。「鴉たち」はまるで話者といっしょに「黄泉」からついてきてしまっているように見える。ここで早くもこの詩集全体を貫く謎のような言葉たちのうちのいくつかが登場している。さらに先を読みつづければ、この後にもまだまだ同じような謎の言葉がいくつもの章にまたがって散りばめられているのがわかる。「黄泉」「鴉」の他にも象徴的な「釘男」もあるし、「六角橋」「上麻生道路」「西岸根」などの地名、「骸」「犀」などの言葉もある。さらに他の書物からの引用部分が何度も折りこ
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