批評祭参加作品■〈日常〉へたどりつくための彷徨 ??坂井信夫『〈日常〉へ』について/岡部淳太郎
 
りこまれたり、話者が目撃するそのたびごとに違う内容の貼り紙があったりする。これらのしつように反復される言葉たちは、いったいどんな意味をまとっているのだろうか。


六角橋のマンション二階まで出かけ
一時間かけて全身の疲れをほどいてもらう
(「2」)

死者Kも ぼくも ほんとうは
色あせた黒い服をいつもまとっているのだ
それから六角橋のほうへ進み
旧道をとおって帰りかけた すると
いつのまにか新しいマンションが建っている
(「4」)

きょうも六角橋の迷路をさまよう
(「8」)


 いくつかある地名のうちのひとつ「
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   グループ"第3回批評祭参加作品"
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