批評祭参加作品■食い違う夢 −『私たちの欠落(夏の日の)』藤丘 我流読解−/大村 浩一
だと感じた。
恋人や夫婦は、相手の全てを知り尽くして契りを交す訳ではない。
自分の中にいる異性像をユング心理学では確かアニマあるいはアニムスと呼
ぶと思ったが。自分が求める相手の人物像には、自分の意識・無意識の願望か
ら、過去に自分と係わった様々な人や物事との記憶が影響し合い、重なってい
る。相手の何を愛しているのか、現実には本人にだって分かってはいないのだ。
そして相手が何事か隠している、ズレていることを承知で始める恋愛もある
し、ズレたまま婚姻に至る事も多々ある。「骨まで愛して」なんて古い歌があ
ったが、実際には、互いの多少のズレや秘密は、飲み込む積りで恋愛は始める
も
[次のページ]
前 次 グループ"第3回批評祭参加作品"
編 削 Point(8)