批評祭参加作品■食い違う夢 −『私たちの欠落(夏の日の)』藤丘 我流読解−/大村 浩一
常の浸食作用は及ばない」と言ってい
るのではないだろうか。
そして「月の隠れた夜」は「暗闇」つまり夢の中だから、あなた(かもしれ
ない人)と私が「傘をひろげて唄を歌う」「姿は少しも奇妙ではなく」、お互
いに「慈愛に満ちている」。(<編集し過ぎだったらゴメン)
第7連で描かれる映像は、まことに詩的だ。けぶるガス灯、鞄から小さな傘
が開かれ歌になる、小から大へ拡大する暗示の面白さ。
そんな奇妙な映像を描きながら、それを「奇妙でなく慈愛に満ちている」と
断言する。これは主人公のなかの不可触の領域が、外部の真実に対して勝利し
たことを意味するのではないか。
#次第に私はとても
[次のページ]
前 次 グループ"第3回批評祭参加作品"
編 削 Point(8)