遺書(2)/虹村 凌
珈琲であった。俺は身を起こし、足元に置いてあったピーチネクターを掴むと、思い切り自動販売機に投げつけた。
ゴキン、と言う音がする。遅れて、自動販売機が警報音を響かせ始めた。俺はゆっくりとホープを取り出し、火をつけて、大きく吸い込んだ。煙が、肺の中に満たされるのをイメージしながら、ゆっくりと吐き出す。肺の中の息を吐き出しきってから、思い切り自動販売機に蹴りを入れて、俺はその場を後にした。
気分転換を図ろうとして、こうも苛々するとは思わなかった。今日はもう遺書を書くのをやめた方がいい。こんな気分じゃ、まともな遺書なんざ書けるはずがない。俺は腐る気持ちを、かろうじて落ち着かせながら、自分の部
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