遺書(2)/虹村 凌
 
 果たして、俺は目的の自動販売機の前に到着した。俺が欲する飲み物は、あまりメジャーでないのか、近所ではここの自動販売機にしかない。俺はポケットの中から小銭を取り出し、投入口に入れた。チャリン、と言う音を立てて一枚だけが返却口に落ちてきた。少しばかり、苛立ちが募る。俺は乱暴にコインを取り出し、再び投入口に入れた。ようやく、自動販売機のボタンが緑色に輝いた。ゆっくりと、その中の一つのボタンを押した。ガシャン、と言う音と同時に、取り出し口の中に缶が転がった。
 俺は身を屈め、その缶を取り出そうとした瞬間に、苛立ちが沸点に達しそうになった。俺が好き好む炭酸飲料のボタンを押したにも関わらず、飲みたくも無
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