面接(9)/虹村 凌
胸糞悪い思いと同時に、反論の余地の無い事実と言う二つの思いが、べっとりと身体の真ん中にくっついて離れない。熱めのシャワーで体中を洗い流し、浴室を出る。栓を抜いた訳でも無いのに、浴槽の中から、ゴポゴポと水で誰かが喋っている様な音がする。換気扇のタイマーをセットし、浴室の電気を消す。
「ゴポゴポゴポゴポ…」
真っ暗なリビングに、薄い月明かり、銀色の街灯、それと、走り抜けていく電車の灯りが、部屋を照らしていく。部屋中で無数の、嗅いだ事のある匂い、知っている呼吸音とそのリズム、動き、が光の当たらない闇の中でうごめいている。現実にあった事と妄想の産物、どこまでが現実でどこからが妄想だったのかわか
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