面接(9)/虹村 凌
 
わからなくなってきた瞬間から、部屋中に少しずつ溢れたそいつが、ずっと俺を呼んでいる。だから、あまり部屋を明るくする気になれない。どうせ、電気をつけたところで、一瞬にして気配は消えるのだが。
 俺は机の上に転がっているピースに手を伸ばし、火をつけた。ギシ、ギシと床の軋む音がする。くちゅ、くちゅと口付ける音がする。何時から、現実と妄想のラインがわからなくなったのか、もう最近は思い出す事も出来ない。俺は喉の渇きを覚え、冷蔵庫のドアを開けた。
「本当はわかってるくせに」
 冷蔵庫の中で、俺が座ったままこっちを見ていた。
「本当は、わかってんだろう?何が現実で、何が妄想だったかって」
 
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