面接(10)/虹村 凌
である。昨日までの自分を、覚えていればいいのだから。俺は昨日までの自分を覚えている。だから、違和感など、感じさせるはずが無い。何時間もの間、同じ空間にいる俺と彼女は、言葉を交わす事は無かった。
何事も無く、また、一日を終える。彼女は、再び、ロッカールームの前で待っていた。通り過ぎる人を、やり過ごす為に、携帯をチェックしているフリをした。姑息だと思うが、今のところはこれでいいだろう。俺は携帯を閉じると、彼女に目配せをした。彼女は静かに歩き出し、俺は黙って三歩後ろに従っていた。
外に出ても、彼女は俺の三歩前を行く。曲がり角をひとつ、ふたつ、曲がり、横断歩道を渡る。更に1ブロック歩いて、左に
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