面接(10)/虹村 凌
 
左に折れる。その先の神社の入り口で、彼女は立ち止まった。くるりと振り返ると、ニコリと笑った。ドロリ、と何かが胸の真ん中で垂れ落ちた。
「お疲れ様です」
 俺は平静を装い、精一杯の笑顔で言った。
「お疲れ様です」
 彼女は笑いながら、石階に腰掛けた。ハンドバッグの中からピースを取り出し、ジッポで火をつける。ジッポをしまった彼女は、石段を手で叩き、
「隣、座らないんですか?」
と言った。俺は黙って彼女の隣に座って、同じようにピースに火をつけた。
「あれ、セブンスターじゃないんですか?」
「昨日、気分で買ったんです、ピース」
「浮気するんですね」
「浮気、と言うよ
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