ゾウムシ(百蟲譜4)/
佐々宝砂
ちっちゃくて硬い。
鈍色にくすんだ鉄のかけら。
美しい鳴き声は持たない。
美しい模様もない。
田舎の物置の
米ぬか臭い片隅で
ただ生きてゆくために
もぞもぞと生きている。
生の意味を問うな。
レーゾンデートルを問うな。
生の目的を問うな。
ゾウムシはただ生きる。
何年も何年も。
ただ生きてゆくために。
(未完詩集『百蟲譜』より)
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