ツノゼミ(百蟲譜3)/佐々宝砂
見た目はパッとしない。
目立たない。群れない。
硬そうにみえてそうでもない。
脆いかというとそうでもない。
灰だか茶だか緑だか色曖昧な身体には
何のためだかツノがある。
これがまた雄同士の争いにさえ
役立ちそうにないツノで。
ときたまぴしっと跳ねてみせる。
それがいやにきっぱりしている。
どこに行ったんだろうと思うと
いつのまにか手の届かない遠くにいる。
私はこういう手合いが好きだ。
あくまで虫の話である。
(未完詩集『百蟲譜』より)
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