コクガ(百蟲譜46)/佐々宝砂
 
夏バテしちゃって
ソーメンばっかり食べていて
しばらく米を食べてなくって
米びつの米はほっぽらかしで

へんだなあとは思っていた
締め切りの部屋に小さな蛾が群れ舞うから
妙だなあとは思っていたが
米びつの中がやつらの天国だったとは

夏バテなんか知らないらしくて
せっせせっせと米粒食べて
米粒つなげて繭までつくって

さてどうしよう今さらどうしよう
米を三合研いだだけで
幼虫が十匹は浮くのです



(未完詩集『百蟲譜』より)
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