アキヨシメクラチビゴミムシ(百蟲譜47)/佐々宝砂
 
急な坂を登ると博物館があった。
湿っぽい薄暗い埃っぽい、
いかにも淋しいガラスケースの中、
脱脂綿の上にひっそりとその虫はいた。

大きな虫眼鏡で拡大して、
ようやく何やらイキモノに見える、
その虫の名は
アキヨシメクラチビゴミムシ。

絶滅しそうだというその虫が
あっさりと絶滅したところで、
誰一人困りはしないはずなのに、
私はなぜだか困ってしまった。

平日の秋吉台は閑散としていたから
バスがくるまで涙は拭かなかった。




(未完詩集『百蟲譜』より)
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