いつものカフェ。ハイテーブルとハイチェア。
磨き込まれた木枠に少しくすんだオレンジ色
の座面。向かいの椅子には誰もいない。コー
ヒーカップはひとつ。柔らかな香りを立てて。
《BGMはカウント ....
よいやみの森の奥
ざわめきから発する声に
はだしで駆け出す
届かない
祈り
後悔を知ることのなかった
指が
刻んでしまった
ある言葉の意味
腕の傷は生々しく迫り
行方を知るはずのな ....
ともだちみんなに責められて
泣きながら土下座をした夢から目覚める朝
からからと窓を開けると
こいびとが
摘んだ花を差し出して笑っていた
洗濯物のすきまから
「どうして?」って訊いたら
「 ....
天気の良い日だった。空はあくまで青かった。
限りない空間が存在していた、それはわたし
に手を差し伸べようと努力していた。一歩踏
み出す、その毎に、つま先から花が生まれる。
生まれた花は風に飛ば ....
ライムを搾ればそれだけでいっとうだわ そ
う云ってきみはライムソーダを眺めている
少しばかりゆがんだグラスの底から生まれた
泡が ゆるやかに浮かび上がっては ぱちり
と弾ける きみの瞳はい ....
ねえ、あなたの名前をおしえてよ
/わたしはね、
ははよりぶんりしたすうじつご、から(…)
という名をあたえられた、わたし、はわたし
としかしきべつされないなぜな ....
二ペイジ――ある光たちが生まれ寄り添い、
限りない凝縮と拡散を繰り返す。永遠を覚悟
していた闇が解き放たれ。
三二六ペイジ――まだ足らないのかもしれ
なかった。それでも満足していた ....
ミニバラ、カスミソウ、トルコキキョウ
ある揺らぎが産み落とされた、
この日
このよく晴れた日をふちどる、
あざやかな
あざやかな
モノクロの葬列
/今日も大量の薬を飲む。てのひらから ....
降りしきる雨が冷たくて
空色の傘と長靴と
赤い錠剤を渡したけれど
きみは、
だいじょうぶと笑って
飛び出していった
降りしきる雨に
きみが壊れやしないかと
怖かったんだ
....
たとえば十年弾かないピアノになりたいので
す たとえば乾いたウェットティシュになり
たいのです
薬局の陳列棚にはカフェイン剤と睡眠導入剤
と鎮痛剤が並んでいました ボタンを掛け違
えて服 ....
境界。光がゆるやかに拡散し、とびはねて。
舞い散る分離した色、いろ。
/夏の砂だの、猫の毛だの、ゆくえのないか
んじょうだの、とかげの過剰なしっぽだの。
大気はそんなものをすべて包容するの ....
風が
五月を終わらせる風が
不規律なステップを踏み
わたしは
ほどけないからだで臥せったわたしは
頬をゆかに押しつけ
網戸越しに流れ込む黄や薄青や緑を
血の通わない指で
ゆう ....
雨の音に気づいて、
薄暗い転寝からわずかに目を醒まします
ひざのうえには猫がいました
雨は屋根から滑り落ち、壁をつたい、
床を這って、そして、
じわじわをわたしの胎内にしみこみます
ぴちょ ....
白の人は煙草を吸っておりました
一息吸ってはゆっくりと
口から引き出された煙は
、そして、ゆるやかな渦
雨が降っておりました
さら、さらさらさらさらさら、さ
白の人は煙 ....
どこにいますか、とうめいないま
なにいろですか、ちらばるかぜ
編まれた雲のひとすじと砕いた虹の一音まで
まきとる古ぼけた糸車
つみあげる小さなてのひら
秘めたつぼみの膜を ....
たべること、の行為性から公式を導き出せ
抱え込んだまま手放せない負の負債
線になりえないまま描かれたグラフ
点の散逸は戸惑うばかりで
「くずしてよ」
倒したグラスが
反転した世界か ....
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