回転寿司屋に入ると
寿司といっしょにジュースの缶が回っていた
しかもプルタブはあいていて
中身が入っていない
すいません、これ何ですか
ええっと、空き缶ですが
何の意味があ ....
銀座は今日も沢山の人で溢れかえっていた
中央通りの歩行者天国を歩いた
人民服を着た小柄な初老の男が弾く胡弓を聴いた
白人の大柄な大道芸人のピカピカと光る赤いつけ鼻を見た
人ごみを歩くのが苦 ....
ロボットは町中の人々に
自分はロボットであると言って回った
町中の人々は
確かにお前はロボットだと答えた
しかし、ロボットは
俺はロボットの言うことしか信じない
と言い続け
ある ....
エレベータの中で
一人の羊飼いと出くわした
私はその羊飼いのことは知らないし
羊飼いも私のことを知らない
二人とも
なんでこんな所で出くわしたのかわからずに
どうしたものかと
す ....
牛乳を買ってきたつもりだったのに
袋に入っていたのは
それはそれは立派な
乳牛だった
妻は、こんなものどうするつもり、と怒りまくり
娘は、牛さんが来た、と大喜びをした
毎朝、新 ....
今日は見えないゴミの日だ
見えないゴミの収集車で
見えないおじさんたちが持っていく
見えないゴミのステーションで
隣の岡田さんに会ったけど
見えないので何を捨てているのかわからない
も ....
ネギを買いそびれて
僕たちはネギの話ばかりしていた
こんなに真剣にネギの話をしたのは
何年ぶりだろう、なんて
今でもネギを見ると
あの日のことを思い出す
だから僕は
ネギを食べなくな ....
今、寒いと言った
昨日も言った
一昨日も
その前の日も、多分
毎日毎日が
まるで当たり前のように
それを確認するかのように
毎日毎日を
明日、僕は
大好きなあの人と結婚し ....
くちびるに海苔がついているから
愛してる
って言葉も
何だかシャケっぽい
芝生にはたくさんのシートがひかれて
僕らのピクニックは
その一番隅っこ
風で泳いでいかないように
いろいろ ....
「ふ」を付けただけで
不幸せになるのなら
最初から幸せなんていらない
「む」を付けただけで
秩序を失ってしまうような世界は
多分まぼろし
「み」を付けただけで
来るのだろうか ....
テーブルの上に何かを忘れてきてしまった
いったい何を忘れてきたのだろう
それは大きなもの
ではなかった
かといって小さなもの
でもなかった
賞味期限が切れそうなもの
でもなく
....
「そもそも、わしが生きていたころは」
生きていたころは、なんて言うくらいだから
やって来たものは
今はもう生きていないものなんだろう
「そもそも、わしが生きていたころは!」
今はもう ....
透明な波が
どこからかやってきて
ささささあん、ささささあん
とうち寄せてくる
けれど
透明な波はあまりに透明だから
私はいつもそれに気づかない
例えば
静かな朝の食卓
箸を ....
こびとは手紙の最後に
「こびとより」とそえたあと
「こ」と「び」のあいだに
小さく「い」の字を書きくわえた
しばらくながめているうちに
恥ずかしくなったのだろうか
てのひらで手紙を丸め ....
妻と相談して
家にエレベーターを取りつけることにした
けれど、取りつけた後で
この家には二階も地下室も無いことに気が付いた
ボタンを押すと
チーン
と音がして扉が開く
上にまいりませ ....
濡れズボンが風にそよいでいる
明日ごろまで生きていれば
多分それを穿くわたし
ねえ
あそこに流れていくものを
いつから雲だと知ったの
深夜、バスに乗る
乗客もまばらな車内
運転席をのぞくと
濃紺の制服を着た父が座っている
昔、一度だけ
大人になったらバスの運転手になりたかった
という話を聞いたことがある
どこかで何 ....
桜の枝を折ったジョージは
一生砂漠の砂を数え続けるという
罰を受けた
ああ、それならいっそのこと死刑にしてください
そう懇願したが
いやいや、罰とはそういうものなのだ
裁判長のこの ....
普通の椅子だったのに
ある日、突然
わたしは人になった
初めて目でものを見た
初めて呼吸というものをした
初めて手でものを掴んで
初めて足で歩いたりもした
椅子に座らなければ ....
よんどころない事情があって
きりんはタクシーに乗ろうとするけれど
長い首がひっかかり
ああしたり、こうしたりしても
乗ることができない
もうどうしようもないから
きりんが運転手のお ....
彼女からの手紙が
炊飯器の中で見つかった
もう
ほっかほかの
ぐっちゃぐちゃで
炊きたてのご飯はうっすら黒く
食べると微妙にインクの味がする
時おりぐにゃりと繊維をかんだりもする ....
バス停で
ネクタイをしていないことに気がついた
社会人としてあるまじき失敗
かといって家までネクタイを取りに帰る時間も無い
ネクタイに代わるものを探していると
あった
ベルトだ
....
ニュージーランドにいるキウィという鳥は
羽がすっかり退化してしまっていて
空を飛ぶことができない
夜行性のその鳥は
夜になると木の穴の中などから出てきて
えさを探す
もちろん飛ぶことが ....
「うみ」
と書けば
白い波が寄せて返し
「そら」
と書けば
どこもでも青く
「もり」
と書けば
木々が香り
「とり」
と書けば
それは翼をもって飛びまわり
「ま ....
天ぷらを揚げているうちに
この世にいるのがわたし一人きりになった
キッチン
みんないなくなってしまった
父も
母も
あなたも
娘も
隣の中村さんも
隣の隣の西野さんも
裏の ....
彼女に歌をつくってあげたかった
とってもスウィートでハートフルなやつを
彼女のためだけにつくって
彼女のためだけに歌いたかった
プリンの歌がいいな
うん、いいね
僕はノートに詞 ....
人差し指に生えた翼が
大空に憧れるから
気がつくとわたしの左手は
空にまっすぐ伸びている
飛びたくても飛べない右手が
それにつかまって
わたしだけ一人
地面に足を生やしている
あなた、頑張って
隣で寝ている妻の寝言にびっくりした
寝ているのに何故わかったのだろう
わたしはちょうど42.195キロのフルマラソンの最中で
トップを走っているのだ
これからきつい ....
年老いた画家は絵の中の少女に羽を描いた
羽を得た少女は絵の中の空を楽しそうに飛び回った
画家は少女にもっと立派な羽をつけたくて描き直そうとしたが
羽をとられてしまった少女はうつむいている ....
街中を
ウィリアム・テルが走り回っていた
何故ウィリアム・テルと分かったか、というと
それはどう見てもウィリアム・テルだったから
駅前の市営駐輪場に
真っ赤なリンゴがポッツリとあった ....
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