むかし、月が今よりも丸く、
夜がまだやさしかったころ。

きつねの子は、
夜ごと海の底を思っていました。

月の光が届かぬ夜、人魚が歌をやめ、
静かに身を抱くと聞いていたからです。

 ....
星になった河童を、見た者はいない。

夜空に、それらしい星もなかった。

見つかったのは、下流の淀みだった。

名もない場所に、
壊れた体が引っかかっていた。
しかし
誰のものかは、 ....
 咲子  前書き


 この小説は、二〇一二年から四年余りかけて書いたもので、原稿用紙枚数で二五〇枚余りあります。物語の内容は、行方不明者となった恋人を探し求める男の話しなので、恋愛小説であるこ ....
村では、あの夜の話は
語られなかった。

誰が家を抜け、
誰の火が消えていたのかも。

帳面には、
また一行、空白が増えた。
それは欠員ではなく、
河童という神の取り分だった。

 ....
この詩の静かな独白のなかで以下の詩句だけがかなり際立って
ポエジーを孕んでいる詩句ですが、

 好きだ、
 という言葉は

 洗われて
 白くなり
 冬空の下で干され
 吊るされた大 ....
幾日も 焦燥感に さいなまれて
ある日 ハヤの泳ぐ川の水が
ありありと 心の中に流れる

澄んだ 水の感触 腹黒さも胸の焼けたような虚しさも
済んだ

棲んでいると からだの内側から 虹 ....
         ①
田中宏輔2さんの『LGBTIQの詩人たちの
英詩翻譯 しょの66』
についてはその"誤訳"の詳細をコメントに書いて
おきましたが、翻訳のことではなくコ ....
翌朝、雨は止んでいた。

橋は残り、村も残った。

橋のたもとに、草履が一つ落ちていた。
長老はそれを拾い上げ、言った。

「河童が、星へ行った跡だ。」

河童は村を救った。

 ....
荒れる水の中に、“影”が見えた。

「あれは河童だ」と
誰かが言った瞬間、
助ける理由は消えた。

“影”は、
重いものを背負っていた。

甲羅のようにも、
石のようにも見えたそれ ....
その年、
雨が止まなかった。

村人が恐れていたのは、
流されることではない。
川底に沈めた重い過去が、
浮かび上がることだった。

「誰かが行かなければならない。」
それは命令では ....
その年、
帳面の人数が合わなかった。

一人、多いようでもあり、
一人、少ないようでもあった。

誰も慌てなかった。

数え直せば、“誰の名”を
呼ばなければならないか
分かってし ....
いつからか、川には
「河童がいる」と言われるようになった。

言葉は、地面から滲み出たように広がった。

見た者はいない。

けれど
夜の川が、笑っているように
聞こえる日があった。 ....
村のはずれに、川があった。

山から下り、すすき野原を横切り、
村の前で肘を折るように曲がる川だ。

川は澄んではいたが、やさしくはなかった。

洗えるものは、すべてここで洗った。
泥 ....
村が「清潔な沈黙」に包まれてから、長い年月が流れました。

かつて野原で叫んでいた少女も、
冷酷な釘を打った大工も、
皆この世を去りました。

残されたのは、すすきに埋もれ、
誰からも忘 ....
村長と長老たちは、神社の拝殿に集まり、脂ぎった顔を突き合わせていた。
彼らにとって、すすき野原の「影」は、もはや恐怖ですらなかった。
それは彼らが築き上げてきた「村の秩序」を脅かす、目障りな不純物 ....
与一が神社の周りを耕し始めてから、
すすき野原の様子が少しずつ変わり始めていました。

それまでは、ただの「空き地」だった場所が、
何やら得体の知れない「熱」を持ち始めたのです。
風が吹けば ....
秋の陽光が、すすき野原を白銀の海へと変えていた。

その海を割るうよにして、
一台の荷車がゆっくりと村の坂を登ってくる。
車輪が砂利を噛む「ぎい、ぎい」という乾いた音が、
静まり返った村に不 ....
その年、川は何事もなかったかのように、穏やかでございました。

氾濫もしない。渇きもしない。
人の都合に、ちょうどよい顔をして流れていたのです。

村人たちは、胸をなで下ろしました。

 ....
これまで、やれH氏賞をだれが取ろうと、やれ中
也賞を誰が取ろうとまったく関心の外だった。で
もさすがに草間小鳥子さんのH氏賞受賞には苦笑し
てしまった。
現代詩の界隈も落ちるところまで落ちたか ....
三郎沼が干上がってから、村は何も変わらぬふりを続けておりました。

水の無い沼は、ただの窪地となり、子どもらは近づくなと強く言いつけられた。大人たちは、あの夜の話を口にせず、まるで最初から沼など無 ....
それが“誰だったのか”を、村が知るまで、そう長くはかかりませんでした。

川辺に残った、三郎のものではない足跡。

それは日ごとに増え、やがて消え、また別の場所に現れました。形は人に近く、けれ ....
三郎の名が、村の口から消えはじめたのは、そう年月の経たぬ頃でございました。

神として呼べば重すぎる。妖怪として呼べば怖すぎる。

結局、人々は名を避けました。

「……あの水のこと。」
 ....
人はだれか他人を内心小馬鹿にしたとき、その者にや
さしくなれる。そして人はまた、その小馬鹿にしてい
た相手が意外に利口であったことに気づくと、そのや
さしさのフリをかなぐり捨てて憎悪すら感じるも ....
無期懲役。
結果を言い渡すのは簡単だ。
被害者は元総理経験者である。
詳しいことまでは知らなかった。
あの宗教団体のことを…
で、済まされるのだろうか。
祖父の代からの関係である。 ....
三郎が消えてから、村は確かに救われました。

ぬらくら川は牙を収め、堤は崩れず、田は実り、子どもらは裸足で川を渡るようになった。人々は言いました。

「河童三郎は、神さまになった。」

そ ....
むかし、むかし……と語るには、あまりに生々しい頃の話でございます。

山あいの村に、ぬらくら川という名の川が流れておりました。春になれば雪代が荒れ、夏には深みが増し、秋には底知れぬ色を帯び、冬には ....
 【映画『PERFECT DAYS』──あるいは安全な賭け】
https://po-m.com/forum/showdoc.php?did=394970
 
中田満帆氏はベンダースの『PERFE ....
日本社会において、政治と国民のあいだに宗教的価値観や組織が介在しているように見える場面は少なくない。この指摘は、特定の宗教や信者個人を非難するためのものではなく、社会的問題がどのように処理され、どの段 .... 結局出来はしませんでした
AIが代行してくれるらしく
ああ、これは楽だな

天気輪の真下から
同じ駅の違う時刻表で
彼に一つ、なぞなぞの答えを探して来てほしいとお願いしました。

ふと ....
権威化した左翼エリートが、添削をする、という規範を、AIが担い、より優しい先生について、自分のペースで、比較されずにゲームに参加できるならば、たとえば詩が上達する、自分自身を表現できる、といった芸術表 ....
散文(批評随筆小説等)
タイトル 投稿者 Point 日付
『きつねの襟巻、人魚のうた』 第一章:襟巻からこぼれた命[group]板谷みきょう1*26/2/2 20:49
星にならなかった河童 最終章 星になれない河童[group]1*26/2/2 20:43
咲子①たま3*26/2/2 15:15
星にならなかった河童 第七章 見なかった人たち[group]板谷みきょう1*26/2/2 13:32
凄いぞTOP10! 『透明な残火』atsuchan69室町 礼1+*26/2/2 12:44
凄いぞTOP10! 『はらぐろくも むなしくもない』るるり ...0+26/2/2 5:59
田中宏輔2さんの『LGBTIQの詩人たちの 英詩翻譯 しょの ...0+26/2/1 17:40
星にならなかった河童 第六章 星になった河童[group]板谷みきょう1*26/2/1 16:32
星にならなかった河童 第五章 川へ行った者[group]1*26/2/1 16:21
星にならなかった河童 第四章 大雨の夜[group]1*26/2/1 12:55
星にならなかった河童 第三章 人数の合わない年[group]1*26/1/31 11:04
星にならなかった河童 第二章 河童の噂[group]1*26/1/31 10:55
星にならなかった河童 第一章 川のある村[group]2*26/1/31 10:46
すすき野原の物語(はかりしれない郷愁)[group]1*26/1/29 22:30
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