自分の歩んできた人生なんてゴミみたいなものの寄せ集めだなんて思っていても、記憶の海の底に懐中電灯をかざしてみればそうとも言い切れない事に気付かされることがある。
近所にT ....
書くことは思考を連れてくるから、たちどまってはいけないのだ。
季節や天気のせいにした動かない体を冷やして、信号を入力する。
花のことから書こうと思う。
ま夏の花びらたちのこと。さえた緑の ....
ここ二〇日ほど勤務や家業で、休みなしに働き、体に違和感を感じていた。
朝方、今日の弁当は?と妻に聞かれた。十三日から開始した登山道・あるいはその周辺の除草作業だったが、そのきつさや膨大な作業量を ....
8月14日 AM6:00
起床。カーテン越し、自室の窓には早くも直射日光が照り付けている。網戸にしてあるからといって、別段涼しい風も入ってこない。フォーラムに ....
我家のせせこましい厠(INAX,2017製)で用を足しながら考えた。今まで一体どれ位のオシッコを流してきたのかと。何トン、いや何十トン?詳細は無論不明だが、まあ、それはとにかく凄いことに相違 ....
そうだ。それがぼくだった。それがぼくのまぎれもない姿だった。大岡という名のさびれた道の駅。その汚い男子便所の左手に突如として広がる絶景をぼくは忘れることができない。旅人でなくとも意表をつかれるよ ....
「千羽鶴」 作詞 横山 鼎 作曲 大島ミチル
式の終わりに際して地元の少女たちによって合唱される。悲惨で哀しい出来事を表現したこの歌は決して哀しみだけを閉じ込めて表現されてはいない。それが ....
8月9日。国民年金保険料の免除申請の仕方がわからない。それから、雇用保険の手続きに必要な事の一切がもの凄く煩わしい。最近は色々な生活処理能力が目に見えてガクンと低下してきている。大事な郵便物や書類の類 ....
イザベラの瞳は大きくて、最初に会った時から、それがとても印象的で、そこが魅力的だった。その瞳で真っすぐに見つめられると、僕は身体が透明に透けて、精神の奥底まで透けて見えるのではないかと、不安を感 ....
新学期が始まる前の部屋替えが始まった直後に、気が付くことになったのだけど、灯台元暗しの言葉どうりで、朝食の時、食堂でいつも会っていたイザベラが、何日も食堂に現れず、ずっと、気を揉んでいた僕だったけど ....
イザベラは最初から、僕の外見ではなく内面を見てくれたのだと思う。要領が悪くて損ばかりしている僕の人の良いところや、外見からは分かりにくい、子供じみている傷つきやすい純粋なままの精神とか、他人には伝わ ....
君と二人で卓球室と呼ばれる閉鎖された7組の教室の掃除をした時、君は14歳で、ぼくもたぶん14歳だった。
ぼくは君のことが気になっていたね。すごく可愛かったし、頭がよかった。国語ができていつも満点 ....
イザベラとのお付き合いが始まって、一緒に散歩に行ったり、一緒に食堂でご飯を食べたり、部屋に呼んで料理をふるまったりしてみて、分かったことなのだけど、イザベラは若い日本から来た留学生の女の子たちとはち ....
世の中にはたぶん腐れ縁というものがあって、ぼくにしても、そうした抗することのできない不思議な力の命ずるままにこんにちまで生きてきたと言っても嘘ではない気がする。
ぼくには大学時代からの友 ....
{引用=或いは小噺『洗顔異譚』}
「顔を洗って出直して来い!」って言われたんで
顔を洗ったら顔がとれちまってね
仕方がないからそのまんま取って返すと
....
現在まで女性から、心無い、哀しい非難を受けても、屈辱的な想いをさせられても、甘んじて受けて、大概の場合は、我慢して耐え忍んできた。
はっきり言って僕の外見には、魅力は無いと思う。髪が細くなり、そ ....
ぼくらがその時住んでいたアパートは二階建てで、二階のちょうど真ん中の部屋がぼくらの住処だった。
深夜一時半、月が白々と全てを明るく照らし出している夜の中へ、ぼくはひっそりと出ていくことにした。
....
{引用=*《明科》
{ルビ山間=やまあい}にある明科という名の小さな駅から、ぼくは下りの電車に乗った。よく知っている場所のよく知らない駅だった。それは梅雨入り前のこと ....
親しみを覚えるのはノリに乗った文章ではない。
ところどころ覚束無い感じの消しゴムで消した跡が今にも見えてきそうな文章がいい。
ためらいがちで、口下手で、それでいて丹念な性格が見て取れるよう ....
近所に打ち放しコンクリのばかでかい博物館がある。
館内はなぜだかいっつも薄ら寒くて
無機質なあいつの心ん中みたいなんだ。
奴はそれこそ、のっぺりした四角四面の「ぬりかべ」だね。
ちょい ....
営農センターの方から多くの桃が北側の倉庫に運ばれて来ていた。
フォークリフトの爪が木製のパレットに引っ掛かかる時に出す苦しげな音が梅雨明けの北信地方に反響し、鉄で出来た{ルビ軌条=レール}のような態 ....
ネットアイドルの世界は、深い。
この深さとは多様であるというだけでなく、多様な世界を止揚した上で希薄な接続をも一つの因子として処理しうる、一般に”業”と呼んでも差しつかえない寛容さが生む途方も無 ....
その歳若い上司は、ぼくどころか妻よりもずっと若く、なんとその若さで現場のチーフを仰せつかっているとの事だった。
妻はつねづね、その上司が、制服の上から胸や腹のあたりを無造作にガリガリと掻きむしるのが ....
物音と話し声を聞いたとき、ぼくは布団の中いた。
ぼくは、しばらくじっとして、できるだけ注意深く外に耳を済ませることにした。
空耳ではないはずだった。
たしかに、微かな話し声と、横たえられ ....
心奪われる詩、とりわけ自由詩のそれにかんしてはだいたい数行読んだだけでピンと来て、後頭部から頭のてっぺんにかけてスッコーンと何かが抜けるものだ。
しかし、なかには例外もあり、これが不思議なところ ....
「イラハポ」は、「イラストレーション+ことのは=ポエム」の略(イラ は ポ)です。
ポエケットで販売しようと思って詩画集みたいなよくわからない冊子を作ったのですが、コロナ自粛で参加できなかったので、 ....
「家が裕福で顔立ちも優れた青年が《街》におり、」とその物語は語り出される。
思い掛けない一角から起こる破裂音が年々音量と頻度を増しているこの街の中で、世代を越えて変わらない物はこの上演会だけだった ....
{引用=くたびれはてたやつらが
ざくざくとわきだしてきて
としとったたいようとあくしゅをする
わたくしは
くるい
すべてをだめにしたあとで
えりをただして
あしたにあいさつへいこう}
....
20代後半の頃、ボランティアをしていた事があった。
それは人生で唯一、サンタクロースの恰好をしてジングルベルを歌うのを自分に許せた季節であり、一銭にもならない仕事の代わりに、食べきれない量のお菓 ....
{引用=「言葉にならないなら、無理しなくてもいいよ。だって海にならないからって、水は流れるのをやめる?」}
サクラソウという名前の花を買った。帰り道に食材を買いに寄ったホームセンターの見切り ....
23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63
【散文(批評随筆小説等)】散文詩は禁止。散文詩は自由詩のカテゴリへ。
0.48sec.