ファシの街では激戦が続いていた。ファシブル軍も
果敢に応戦したが、アースランテのほうが一枚抜きんでていた。
そこにはやはり、魔導に頼るものと武力に頼るものとの違いがあった。
魔導士の力には限りが ....
マリアノスは、そこで女千人隊長のガイゼル・マーガセルに声をかけた。
「もう、ファシの街は持たないのではないか。わたしは遷都も考えている」
その遷都先は、ファシブルの南方にあるヨーミルノスという街で ....
今年もうぐいすが鳴いた
うぐいすが
うぐいすであることを誇るような
透明の声は
命の分身
離れてしまえば
もう本体に戻ることはない
永遠に
たとえば
意に沿わない風にも
うぐい ....
さっきから私の背を追ってくる
オヤジ節の様な咳払い
切れない痰のしつこさに男はどんな顔しているのだろう
振り返り見ず 歩く私の前にはさっきから
くるくる回る
まぶしい笑顔のデ ....
あの人の事を思うと
今でも心がふるえる
あの人がどんなに強かったか
あの人がどんなに優しかったか
私自身
あの人にどんなに励まされたか
あの人に恩返ししたい。
そのための人生 ....
さらっと
神仏
生きる
呼吸
するりと
+++
まあるいお月さまが
雲にかくれたりなさって
顔をだしたりなさって
ぽかんと見ている私は
だまって
道は一つだけじゃない
キミは一人ぼっちじゃない
誰かの足跡
草を踏んだあと
その後に続け続け
来た道 引き返したくなる
時たま しゃがみこむ
いいんだ それでいい
....
お酒を飲んだときは、政治と宗教の話はしない
と書いたことがある
受け取られ方としては
前半部分は吹っ飛んだのである
「最近の若い者は」という落書きがピラミッドにもあった
と書いたことがあ ....
CERNそれはちょうど赤い夕暮れのうつりこんだ道路の水溜まりだった。道路わきの草むらにはおそらく子供たちが忘れていったであろう白い野球ボール、水面にはちょうどあのときのCERNたしかにこんなあかい夕暮 ....
暗がりに落ちていく
想い、重いなぁ
ざらざらした手触りの
荒れたディストーション
そのサウンドに否応なく
惹き付けられ引き込まれ
誰かが自殺する夜明け前
赤ん坊の様に眠るあなた
夢 ....
窓を開けると五月の風と一緒に
校長先生が入ってきた
自分で握ったんだよ、と
おにぎりを食べてみせ
そのまま駅のプラットホームに並んだ
太陽の高さや空気の感じなどで
今日が午後であることはわ ....
○「死にたくない」
朝トイレに入っていると
近所の一人暮らしの伯母さんから
今朝急に胸と背中が苦しくなったと電話が来た
行くと今度で二度目だという
かかりつけの県立病院に行く車の中で
....
出立は二十一時零八分
塩のために歩く
明くる十二時四十三分
塩のために命を失わないよう歩く
扉のすき間から一条を頂く
それに拠ると本日未明
私は既に虚しかったそうだから
....
すべてから
解放され
すべてを
開放し
広大な大地に
遊ぶ
*
気分、沈み
気分、盛り上がり
まるで大海原のうねり
(自我 佇みひたすら静観し)
天空に銀河の ....
私は
優しい人間ではない
ただ
自然で
ありたいだけです
自分の弱さを
自分で認められる人は
ほんとうは
つよい人だ
そこに道がある
私は無知だ。
ここにこころが ....
そんな中、ドラゴンたちは何を望んでいたのだろうか。
ヨースマルテの混乱だろうか、それとも、
エランドルの望む世界の再編だろうか。
ドラゴネイアスは人の形を取ることもできる。
世界の改変を望 ....
マリアノスは、そこで女千人隊長のガイゼル・マーガセルに声をかけた。
「もう、ファシの街は持たないのではないか。わたしは遷都も考えている」
その遷都先は、ファシブルの南方にあるヨーミルノスという街で ....
ヨーラ・テルは、もっとも簡便にして優れた魔法である。
この雷撃の魔法によって、アースランテ軍はファシブルの兵士たちを葬っていった。
建物の物影に隠れて、ファシブル軍は反撃を試みる。
しかし、今や ....
小径にすぅと鬼やんまが消える時も、
林のひんやりとした木陰にある草はじっとしている。
座椅子にふんわりとすわる。
自室の窓から入ってくる光が淡くなっていく夕方。
今日死ぬかもしれない私。
....
新じゃがいもをたくさんもらったので
ご近所さんにお裾分けした
お返しに、と
果物をいただく
蜜柑のようでちょっと違う
きめ細かいすべっとした黄色い皮は薄く
手でむけそうだ
現れた果実 ....
京都駅構内のアスティロード商店街を抜けて
おもてなし小路を行くと連れの彼女が独りごちる
「うわ、六百十五円やて!」
何事かと 彼女の視線みると
老舗珈琲店の店先ショーケースにはり ....
行きそびれた 五時
帰りそびれた 五時
もうそんなに刺激が欲しい年頃でもない、
とつぶやいたあなたが、カットハウスへ
消えてゆく。それでも、歌はどうですか?
それを詩に込 ....
気持ちが焦るのは
自信がないからだろう
いや
焦っているのを
誰かに悟られたくないのと
自分で認めたくないのと
どちらにしても
楽観的になれる要素は見当たらない
そしてまた自己嫌悪に陥 ....
ビスカッチャになった私は
眩しそうに目を細めている
ただ ひと目でお疲れなのだろうと分かる
それがなんとも言えない いい味わいなのだ
植えたばかりでも
水田では風を見ることができる
....
私はもっと
だい好きなぬいぐるみの眷属を
掬いたいと希った
草場に印した手形
乳児の横顔 綴りながら
吊り革ぷらり
四股てっぽう
思うが 存分 炙り返しながら
虫を好きになったり
....
瞳のなかに
広がる砂漠
お舟は進む
青い水平線
花の無い世界、開けて
貴女は索漠と、泣いて
浮き上がる文字の輪郭、
まるで意味を欠き
ただただ輪郭の羅列
ひたすら哀しみ、
....
自称詩人を殲滅するには
核兵器しかないと
結論付けたとして
誰が非難出来るだろう
悪いのは自称詩人であって
核戦争を望む私ではない
太平洋のど真ん中
人っ子一人いない場所に
全世界の自 ....
白い巨人、大股で
光の天空、過ります
ゆっくり流れ
両手を開き
現の夢、ぽっかりと
この世界は比喩で充ち溢れ
この世の未知なる表れに
次々形象の輪郭、浮き彫りにして
輪舞奔放な言の ....
電線に冬の風がやって来た夜
その女と逢いました
赤い上衣も黒いスカートも
くたびれて見えました
デブッチョの男の腕にすがりながら
女はキャラキャラと笑いつづけていました
....
美しいもの
今 光のなか
美しくなる夕べ
風の川に
鳥も 花もあって
私もゆっくり
とけてゆく
とけた私を見ると
どうしても 幾つかの
悪くて ....
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