{引用=夏の飾花}
大荷物を咥えて蟻が後じさる
アスファルトの上をたった一匹で
美しい供物
琥珀色に透けた翅
七宝焼きの細いピン留めのような
ミヤマカワトンボの骸を牽いて
小さすぎて読み ....
「この道を生きる」
そう思い
自分の役を演じた
一日の終わり
「生きるって素晴らしい・・・」
そう呟いた
在りし日のあなたの声を思い出し
川の向こうの夕空を見る
何処からか風は ....
俺が一番、
と密かに燃えているうちに
末広がりな八の視界は開けてきて
幾度もの挫折の後に
二(ふ)っ と力の抜けた
日の夜
九人の侍が和になって
キャッチボールをする夢の中
ボール ....
九月十八日は僕等の結婚記念日で
八月十八日はダウン症児の息子が
世に産声をあげた日で、妻も私も
それぞれに心震わせ、涙を流した。
NICUのカプセルの中で、小さな小さな
呼吸を看護師さん ....
アガパンサスの揺れる向こうから
夏の旋律がこぼれはじめる
空の青と光の白が
みるみるそのまばゆさを増してゆく
そこに君が居た
そのなつかしさは残酷なほどあざやかだけれど
でもそこはもう
....
よい父は、死んだ父だけだ。これが最初の言葉であった。父の死に顔に触れ、わたしの指が読んだ、死んだ父の最初の言葉であった。息を引き取ってしばらくすると、顔面に点字が浮かび上がる。それは、父方の一族に特 ....
暗闇に 弱々しい一筋の光
信じて歩んでみようか
これまでも、これからも、
夜の風
びゅうびゅうと吹いている
公園でお茶
遠い空に
花火
しばらくして
ドドーン
身体の力が抜けて
この感じ
少し眠たく
次の花火を待っている
遠い空に
花 ....
どこか見憶えのあるような、
なだらかな空気のなか硝酸系の毒物を蒔く
愉しそうな子供たち、大丈夫もう終わりだから
地下鉄工事の終わらない夏休み
眠れない夜をいくつもいくつも数えた ....
次々と崩れ壊れゆく波
追跡する遠い灯り
ささくれ立つ闇抱え
どうしようもない
この憧れ哀しみ抱え
次々と崩れ壊れゆく波
遠い灯りに見守られ
己を超える圧倒的な存在
通学路の坂道登り ....
アスファルトにフライパン置いて
目玉焼き焼けちゃうんですって
た、試してみたい
世間の奇人の評判を?
まぁいいだろう
暑い
しかし人間には耐性がある
こうして暑さに身を慣らせば
ど ....
蒼穹の砂浜、
弓の弦、
澄み渡る旋律奏で
七月の波沸き起こり
打ち寄せる旺盛な生命力、
反復され蓄えられ
上も下も右も左もなく
すべて真っ青に透過され
地水火風の精霊たち、
一つ ....
雨上がり、路面電車が
湿りの中で発光したまま
緩やかなカーブを破壊していく
何の変哲もない病室に
復員したばかりの真昼と青空
そこでは誰もが幸せそうに
夕食に出た鰊料理の話をしてい ....
作品はいつもオープンアーキテクチャ
そのうえで未完成のまま投げ出しては
他人の顔を覗いてくるので言ったまで
周りにいる人たちは素人ではない
それぞれの人生を生きる玄人でもない
けど、一所 ....
遠い遠くの、あれは海?
わたしの心を満たしている。
それは快楽にはほど遠く、
何か罪めいた予感に満ちている。
あれは海? 遠く遠い。
砂浜に寝転んで昼顔の花を見ながら、
いつか、いつだ ....
水をワインに変え
白い人、
時という河 滑りゆく
時は切り裂かれ
一瞬の永遠
その光景は開かれ
銀輪の夏、
梅雨を吹き飛ばし
緑亀を買いにお兄ちゃんと
灰白のアスファルト自転 ....
白い漆喰が
薄く、褪せて
遠くの
{ルビ草原=くさはら}で
掛ける
言葉があれば
ひとつの
声を
一本の 煙草 ....
クルマは
オートマティックに進化した
運転能力のハードルが低くなると
免許が必要な危険な物を
動かしているという意識も下がった
運転がヒマだからと
画面をチラ見しながらクルマを操る
人の ....
未だ血圧の上がりきらない朝
乳白色の靄がかかった意識の西側から
コーヒーの香りが流れ込んでくる
オールを失くしたボートさながら
廊下をゆうらりと彷徨いながら
食卓のほとりに流れ着く
....
最期を迎えるならば
例えば
深い深い夜
病室のベッドに居て
国道一号線走る運送屋の
大型トラックの音に
ただ耳を傾ける事の出来る
そんな自分でありたいのかもしれない
....
本当に人間
あんまりな社会性に辟易すると
詩のひとつも浮かんでこない
落ち葉をひろって
たったそれだけのことで
一日が眠りつく
つらい、けれど大切な別離があって
急にころがる
あなたの ひとつぶ
それを どうか嘆かないで
中心に感じて
....
飾る
花を一輪、もう
動かなくなる唇に
飾る
短い一生
不意の熱交換
飾る
フレームいっぱい
ただ ただ笑い
飾る
すべらかな不安
幾何形体
....
たどただしいうでがゆびが ちいさくふるえたあさ
コウシャした あまやとりに くちばしに 魅がある
とびたてないうちに はねが かわいていって まして
さえずりもきせいし ....
中学時代から付き合ってきた
きみはもういない
焼酎が大好きで酔っぱらうと
「ありがとさん!」を連発していた
きみはもういない
何か相談事があると
真っ先に相談に乗ってもらっていた
きみは ....
インスタント闇屋さん
カップのなかで
泣き虫が笑っている
探し続けなきゃいけないものを
かんたんに手に入れようとしたことは
はっきりと罪だったと思うよ
カードは言う、
失う、だが ....
蒼穹の
深い青に
走る無数の
力線、
私を貫く
光の感触
外は熱風吹きつけ
人は誰一人通らず
街道走る疎らな車
草木は光に酸素吐き
天からの力動引き受け
蒼穹の
深い青 ....
風邪をひいた
目がペケになって
じっと寝ている
家族に会いたい
やたら
浮かんでくる感謝
心細い
おじいさんになって
旅立つ時は
朝方にひっそり
がいいかなって思っ ....
ご飯を食べていたければ
パンに変えてみた
同じジャムが続くと
すぐ飽きてしまうので
時々変えながら食べている
入院していたとき
私はいつもご飯だった
隣の患者はパンだった
....
下りに乗ってしまえば
あの日の二人が見える
ような気がする
君が
嘘はつかない
という嘘をつくように
僕は
....
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