長針が短針を抱くカチリ、という音
瞬間に{ルビ羽包=はぐく}まれる世界の潮騒
すべて洗い落とした裸の鼓膜が
時の生誕に身震いする
今は何も知らなくて良いと
優しく目を覆う慈悲の手は
記 ....
いつもより赤い夕陽が レンズのかかった 目に映る
煙突からの かすんだ煙が風にさらわれる
家路へ急ぐ 人々の影が消えそうになる
この日常の風景の中にも 答えはない
自分自身を 分断している ....
ピンクのスポット
タバコの煙が見せる
ギターを泣かせる
チョーキングするときの
薬指がセクシーで
まぶしい
ときおりきらめく
弦が好きだ
あなたは笑う
ライブハウスの
こちら側 ....
歴史は妄想の彼方にある
現実は忘却の中にある
未来は脳髄の何処かにある
いずれにしても無関心であることが肝要だ
冬の季(とき)、春に焦がれ
春の季(とき)、夏を熱望し
夏の季(とき)、 ....
僕は一日、働いて
妻は入院中の周を日がな看病した後
落ちあった、ファミリーレストランの、夕の食卓。
「今日は俺が運転するから、たまには飲みなよ」
「え、ほんとう?」
つい先ほどまでは ....
ほんの{ルビ些細=ささい}な一言で
あなたの顔に、灯はともる。
ほん些細な気づきから
日々の場面に、光は射す。
今・今・今・今・今なのです――
禅体験は古都のお寺の
背後に広がる空 ....
一日の仕事を終えた、独りの夜。
組んだ両手を、一つに{ルビ統=す}べるように
閉じた瞳の前で、ぎゅう…とあわせる。
日々の仲間と横一線に、手をつなぎ
悩みという名の{ルビ靄=もや}さえ ....
薄紫色の波紋で充ちる夕暮れ
うつむく甘い風の香り
きらり 遠くに灯り始める 光の粒
あめ玉のように 宝石のように
水の音は縒(よ)り合わされて舞い立ち
鳥は世界をひるがえす
今 胸から ....
今朝はとても寒かったので
まだ暖まらない寒い部屋で
温かいインスタントスープを飲もうとしたら
スプーンがものすごく冷たくてびっくりした
そういえば
15年程前
仙台のホテルでの夕食 ....
木立を抜けた風が
遠い町のざわめきを運んでくる
夕暮れの空が誘っている
踊りだす色の魔法で
ここちよく…あちらの世界に
ちくちくと心を刺す過ぎ去った風景
風に髪をなびかせながら ....
滑らかな掌が 部屋の中で
私たちの内のどちらかをさがしている
(夜は こんなにも 明るいというのに)
捩じれた、青白い樹の 影が、こごえている
いつか 囁きに似た笑 ....
春も遠く
降り積もる雪が
黒い瞳を希求する
それが例えば間違いだとしても
遠き瞳よ
愛する瞳よ
燈郷に致死量の雪が降る
ホール&オーツみたいな
ポップスデュオかと思ってたんだけど
クラシックなんだって?
珍しいよな
えっ?サムラとゴウチは二人じゃない?
一人?
だって、どっちが作ったのかで揉めてんだろ?
....
血を吐いて小さき手
合法じゃなかった
綺麗な蝶もきたない蝶もカメレオンにペロリ
庭から上がってきたのはサトゥルヌスである
雪の日に来るとは思っていなかったから
ろくに用意もしておらず
急いで台所からあんぱんを出してくる
ぎらついた目が あんぱんか と言っている
毛むくじ ....
正義の味方様!
出番です!
はいはい
ところで正義はどこ?
今ちょっと 外出中です
困るなー
正義がいないと誰に味方すればいいのさ
正義が戻るまで休業だよ
えー
....
雪を被った針葉樹の臍あたり
ふっくりと一羽の雀
小さな瞳に世界を映す
やがて薄曇りの向こう儚げに
手招きをする太陽へと飛び去って
小さな黒点となり
視界から消えた
わたしの煤けた ....
おぅい 北極圏よ
寒気・冷気のかたまり
いい加減にしろよ
今日でお別れってことにしろよ
プレゼントの流氷は
確かにとどいたよ
返 ....
■あなたの書いた文章を■
あなたの書いた文章を
手紙のように読み返す
その中に私がいないことを
気配のひとつもないことを
ついつい何度も確かめて
それでもついつい
もう一度だけ。
....
雪が降り積もる
形の上に
形のままに
雪が降り積もる
同じ重さで
同じ冷たさで
人の想いは
あまねく
くまなく
降り積もることはない
人の想いは
違った重さで
....
生まれながらにセンスがないという
逆境をものともせず
詩人として活躍している
佐村小路守忠相氏の
(どっからどこまでが苗字なんだ)
詩集「蟹みそ」が
まったくの別人によって
書かれたもの ....
季節外れだと思いながらも
地元で行われる
小規模な花火大会を楽しむ
空気が澄んでいて綺麗に見える花火
寒さより美しい花火が優っている
厚着姿が印象的な夜
強い北風が何度も吹き抜 ....
雨のニューオリンズは、
曇った窓越しに少しぼやけながら
淡く水色に滲んではゆらめき
傘をさして歩くふたりを見るともなしに
鯰のフライを一口摘みながら
琥珀色した苦いカクテルを啜り、
ど ....
生きていれば いるほど
<
だんだん強<
なる
<
だんだん強<
欲望する
<
だんだん強<
幸せになりたい
<
だんだん強<
幸せにしたい
もっと ....
「生き残るために瀕死の僕は暴力を振った。怒りを物質化するとても美しい暴力だった「その暴力が美しい被害者を作った。被害者の傷は美しかった「僕は決して消えない罪を背負った。この上なく美しい罪に僕は深く抉ら ....
牙のある天使が夕焼けも見ないで
独り 膝を抱えて座っていた。
全身に受けた燃えるようなオレンヂのひかりも
全身を包むように前に広げた大きな羽根も
寂しさを覆いきれない そんな夕焼けの場 ....
重なるたび、すこしずつ、わたしは失われ
すかすかの肉がさみしくて
取り戻そうと、ふたたび、重なり
また失われ
ぽちゃぽちゃと、太ももの脂肪がつめたい
波のように、寄せては返す、痛みにう ....
1956 1957 1958 1959 1960 1961 1962 1963 1964 1965 1966 1967 1968 1969 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996
【自由詩】自由詩の作品のみ受けつけます。自由詩批評は散文のカテゴリへ。
3.66sec.